素材について-革素材編"コードバン"-
こんにちは、SHIMADAです。
前回、レザーの種類について投稿させていただきましたが、馬革の中の「コードバン」という種類についてお話したのを覚えていらっしゃいますでしょうか。
コードバンには、以前の記事の中では伝えきれなかった秘密と魅力がたくさんありますので、是非今回ご紹介させていただこうと思います。
コードバンとは
まずコードバンの基本的な情報のおさらいから始めたいと思います。
コードバンとは農耕馬の臀部(おしり)からとれる皮の一種で、一頭の馬からごく少量しか採取することができない為、非常に高価なものとして扱われています。
おしりの部分といっても表面の皮ではなく、皮の中間に位置する層を表面・裏面の両方から削り出したものが「コードバン」に分類されます。その削り出す様子が宝石を掘り出すかのように見える為、コードバンは「革のダイヤモンド」と呼ばれています。
そんなコードバンの秘密ですが、厳密に言うと実は皮ではなく、密度の高いコラーゲンの塊です。オオカミや他の動物に襲われても大怪我にならないように、放牧されている農耕馬は臀部に堅いコラーゲンの層を自然に身に着けています。
競走馬やポニーなど、他の動物から襲われる心配のない馬はこのコードバン層をほとんど持っておりません。したがってコードバンは農耕馬からしか取ることができないため、ますます希少価値の高い種類の馬革と言えるのです。
コードバンの特徴
コードバンの特徴として語られるのが、堅牢性と美しさです。厚さは1mm程度と薄い部類に入るのですが、強度は牛革の2~3倍と言われており、長年使用するものに使われることが多いです。
代表的なものでいうとランドセルが挙げられます。6年間小学生に振り回され続けても壊れないという部分で、その堅牢性にご納得いただけるかと思います。また高級靴や財布などにもよく使用されています。
新品のコードバンにはそれほど光沢、輝きがありません。マットな質感のものも多く、購入当初はかなり堅い印象を受けるものもあります。しかしコードバンは使い続けているうちに、人の手の油や汗が革に浸透している脂と馴染んでいき、徐々に美しい光沢が出てきます。
それとともに、堅かった皮がほぐれていき、人の手に吸い付くようなしっとりとした質感に変化していくのがコードバンの魅力です。
レザーは鞣しという加工を通して、生き物の皮から製品の革に変えられます。その作業工程を行う業者の事をタンナーと言い、大小様々なタンナーが存在しています。
現在、高品質のコードバンを鞣すことのできるタンナーは、世界でも日本の新喜皮革、アメリカのホーウィン社の2社だけです。実際にはあと数社存在しますが、品質でいうと上記2社には遠く及びません。
40~50年前にはまだコードバンを扱うタンナーは多かったと言われていますが、コードバンの採取量の低下と、コードバンを製造するのに長い時間がかかってしまうことが原因で、今ではこの2社になってしまいました。製品として仕上がるまで、約半年から1年近くかけて製造が行われるため、お金が入ってくるまでの期間も必然的に長くなってしまうのです。
また、採取する作業の中で削りすぎてしまうと、製品として使いものにならなくなってしまう事もあるため、リスクが大きい皮革の種類だとも言えます。
私は約5年前、コードバンが使われた革靴を初めて目にしました。アメリカの靴ブランド「ALDEN」のバーガンディー(濃いワインレッド)のタンカーブーツです。新品のものと、約6年間履かれたというサンプルが並べて飾られていたのですが、その衝撃は今でも忘れられません。
もちろん新品のものにも光沢があり、はきジワや汚れなど全くない、美しいという言葉がぴったりの靴でした。しかし、衝撃を受けたのはその隣にある、使用感のあるオールデンでした。アッパーの甲部分には横にまっすぐ伸びる履きジワが二本。シワが入っている部分とそうでない部分のコントラスト。新品よりも色が濃くなり、くたっとしながらも光沢が増して迫力を感じさせるコードバン。これを目にしたときは圧倒されました。
「コードバンは良い!高い!」という程度の知識はありましたが、実際に見たのはこの時が初めてで、虜になる人が多いのにも納得しました。
コードバンは、実物を目にしていただければその素晴らしさがより感じていただけるのではないかと思います。ちょっと良い革靴屋さんや鞄屋さんなどに訪れた際はぜひ探してみてください。きっとすぐに見つかりますよ。
「素材選び」は製品化の上で、もっとも大切な要素のひとつです。製品の用途やコストなど、お客様のご要望を様々な面から考慮し、最適なご提案を致します。ぜひお気軽にご相談くださいませ。
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